「歌うパワースポット」サンプラザ中野くん Interview(2011・9)

「サンプラザ中野くんのせたがやたがやせ」はこうやって始まった

 

 去年(2010年)の10月から、Ustreamとエフエム世田谷の完全連動番組「サンプラザ中野くんのせたがやたがやせ」がスタートしています。

 

●黄色い「せたがやたがやせ」Tシャツのはじまり

 

 うちのマネジャーの“ネイキッド”小林は、「農業」や「野菜」の時代が「これからくる!」と思っていて、「それをエンターテイメントに結びつけるにはどうしたらいいか?」とか、いろいろ考えるなかで、VEGEROCK(「音楽」と「食」のコラボレーションで「野菜」や「農業」を応援するプロジェクト)を考えついたりしています。

 

 2年ぐらい前かな、その小林から、「爆風スランプの『せたがやたがやせ』は、タイトルも曲も『農業』な感じがすごくいいので、中野くんの今年のキャッチフレーズは、せたがやたがやせでいきましょう」と言われたんです。

 

 それがきっかけで、「せたがやたがやせ」って書いた黄色いTシャツを着て、いろいろやっとったわけですよ。そのうち、だんだんとおれもその気になってきて、「いやー、おもしろいなー」と思って。

 

 ●Ustreamの新しい流れに乗ってみようという試み

 
 そのころUstream放送が一気に盛り上がってきてました。そらのさんの「ダダ漏れ」を観て「これはすごいなあ」と思ってました。

 

 iPhoneが1個あれば個人でも簡単に放送できちゃう。しかも全世界に同時配信してる。しかもほぼ無料。「これはすごい。市民が放送局を手に入れた」と思いました。これを使わない手はないな、とも。

 

 で、あるとき、「そうだ! エフエム世田谷に、Ustreamと連動したラジオ番組の企画を持ち込んだらどうだろう。ウケるんじゃない?」って思って、話を持っていってもらったんです。そしたらですね、やれることになったんです。


●ミュージシャン向谷実さんのアドバイスで「世界初」

 

 Ustreamに関しては、ミュージシャンの向谷実さんがダダ漏れレコーディング中継をやってたりして、「すげえ!」と思っていたんですね。「じゃあ、向谷さんにいろいろ訊いてみよう」ということになって、そしたら向谷さんが快く協力してくれて、著作権に詳しい向谷さんにいろいろ教わることができて、「ラジオの本放送とUstreamが完全連動した放送スタイル」が可能になったんです。


 というのも、著作権法の関係で、Ustreamの生放送で普通のレコードを流すことは御法度なんですね。ラジオ番組をUstreamで中継する場合、本来は、ラジオで曲を流せてもUstreamでは流せないわけです。だからUstream放送では、曲を流さないかわりに、出演者たちがなにかしゃべっていたりするわけ。


 ところが中野くんの場合は、(レコード会社の)ソニーから出したレコードの音源とは別に、(所属事務所の)アミューズが持っている音源が何曲かあって、アミューズが「OK」を出してくれたので、Ustreamでも中野くんが歌った音源を流しながら放送できるわけです。

 

 向谷さんからは「『せたがやたがやせ』は、世界初のUstreamとラジオの連動放送だ!」と認定していただきました。自慢です(笑)。

 

 

 ◎関連情報

「サンプラザ中野くんのせたがやたがやせ」は毎週火曜日に、Ustreamでは21時30分から、ラジオの本放送(22:00~22:45)を挟んで、23時前まで生放送

・エフエム世田谷(83.4MHz) http://www.fmsetagaya.co.jp/

・Ustream http://www.ustream.tv/ 「spnk」で検索。過去の放送も視聴できる

 

 

 

やりまんしょう! 一人一票実現応援歌「ONE for ONE ~#ippyoの歌~」

 

 向谷さんには「せたがやたがやせ」に何度も出ていただき、「さよならヤマハ渋谷店コンサート」(2011年1月19日)に呼んでいただいたりして、それからですね、濃い関係になってきました。


●向谷さんが持っている“録って出し”の凄いシステム

 

 向谷さんは自身でレーベルを持ったり、レコード会社からレコードを出したり、いろんな活動をしている方なんですが、さっき話したダダ漏れレコーディング中継とかでつくった作品を、なんと、「完成してほぼ数時間後にiTunesストアで売り出す仕組み」を持っているんです。「このシステムはすげえなあ」と思ってたんですね。やっぱこの時代、スピードって重要じゃないですか。


●一票の価値を調べてみたら……

 

 「さよならヤマハ渋谷店コンサート」と同じ頃、人づてに、「一人一票実現国民会議」というものがあって、毎週日曜の午後9時~10時半に「#ippyo つぶやき祭り」への参加を呼びかけていると聞きました。Twitterで、一人一票実現に関してツイートしよう。ツイートが多ければランキングに入るし、ランキングに入れば話題になる。「そうやって少しずつ世の中に浸透させていこう」という趣旨です。ツイッターデモと呼ばれています。

 

 その話を聞いて、一人一票実現国民会議のウェブサイトを見に行ったわけです。でね、自分の一票の価値を調べてみたら、参議院選で鳥取県の選挙権を一票とした場合、0.23票の価値だったんです。一票の価値が、4分の1くらいしかないわけ。「おれはこんなに大人なのに……それなりに税金も払っているし、苦しんで生きているのに……国民としての権利が……なんで鳥取の人の4分の1しかないんだ~っ!!」と、たいそうショックを受けました。


●「曲をつくってください」「やりまんしょう!」


 そのショックについてツイートしたら、どこかの学生さんから「曲をつくってくださーい」というツイートがあって。で、おれはツイートしたわけです、孫正義さんみたく。「やりまんしょう!」と(笑)。

 

 家でギターでつくったらわりと良さげなのができたので、向谷さんに「曲にしてほしい」とお願いに行ったんですね。そしたら「いいよー、やりましょう」ということになって。レコーディングは2月20日でした。夜明け近くに完成して、朝6時くらいにはiTunesにアップされて、国内アルバム部門で1位になりました。


 ◎関連情報

・さよならヤマハ渋谷店コンサート http://www.sayonara-shibuyaten.com/

・一人一票実現国民会議 http://www.ippyo.org/

・音楽で広めよう一人一票 http://www.ippyo.org/topics/2011030901.html



東日本大震災と「TOMOSHIBI -地震が来たら-」

 

 3月11日に地震、12日に「(歌を)つくろう」と思って、13日に風呂に入ってたらできて、15日の火曜日には「せたがやたがやせ」でギター1本で演奏しました。

 

●打ち合わせを見たミュージシャンが「やります!」。一気にレコーディングへ

 

 その「せたがやたがやせ」を向谷さんが聴いてくれてて、「やろう」ということになって、3月18日の昼間、向谷さんのところに行って打ち合わせをして、その様子をダダ漏れしてたら、ミュージシャンが聴いてくれてて、「わたしもやります」と。レコーディングスタジオの人も「タダでいいですよ」って。

 

 「じゃあ夕方からやろう」ということになりました。その日、都内は計画停電していて、スタジオ「Oasis Sound Design Inc.」に行く間に、信号が止まっていたりしました。スタジオの方は、電源車をバックアップで用意してくれていました。で、朝までかけてレコーディングしました。ミキサーさんもタダでやってくれました。完成の数時間後にはiTunesにアップしました。

 いや、もう、ほんとうに、みなさんのおかげです。

●いろんな国の言葉で歌われ、アプリは世界50か国でダウンロードされた


 本当にあの……絆っていうか、ホントにこんな大変な震災の、非日常のなかでしか繋がれないことなので……そういうことでは……みなさんが震災を共有してくれて、協力していただけました。

 

 この歌の弱点であり、強みでもあることは、とにかくみなさんに無料でやってもらえて、無料で配信していることにあると思います。無料なので(被災者の方々には)一銭もお役に立てないです。だけど無料でやってるから、みんな無料で歌ってくれる。それで広がっていってると思うんです。

●時代を共有するツールとしての歌の力


 われわれが信じているのは、結局、歌の力です。「歌の力とは何か?」というと……今回「歌の力って何だろう?」ってすごく考えて、わかったことがあるんです。「歌は時代を共有するツールである」と。

 

 たとえば自分が初恋のときに聴いた歌を聴くと、初恋の時代に帰るじゃないですか。 その時代を体験した人は、その時に聴いた歌を聴けば、その時代を思い出せるし、その時代にいた人と、その曲を通して時代を共有できる。


 2004年に中越地震があったとき、2か月くらい後に被災地の長岡に行ったんです。そしたら、「よく来てくれました」と声をかけてくれて、「中越に関して首都圏では報道されてますか?」「みなさん中越の話をされてますか」って、会う人みんなが聞いてくるんです。「してますよ」というと、「よかった。忘れられてないんですね」。──そのときわかったんです。「忘れられるのがこわいんだな」。「無視されちゃうのがいちばんがっかりするんだな」。「見捨てられた感を感じるのがこわいんだな」って。


 そういう意味でも、この歌をちょっとでも聴いてもらって、覚えてもらって……たとえば数か月後とか数年後に、どこかのラジオから流れてきたとき、「あ、あのときの歌だ」と。そのときに、「みんながんばってるかなー」「みんながんばってほしいなー」というような、気持ちなり、祈りなりを、被災地に向けて発してもらえることで、役に立つと思うんですね。


 この歌が、忘れないための道具、思い出すための道具になれば、と思っています。復興には長い時間がかかるかもしれませんが、この歌でたくさんの人が「震災」を共有していることは、被災地に励ましをずっと送り続けることにもなると思いますから。

 


 ◎関連情報

・「TOMOSHIBI -地震が来たら-」公式サイト  http://www.mukaiyaclub.com/music/tomoshibi/ (※音が出ます)

 

・各国語バージョンのアーティスト

 中国語ver.─BEYONDのボーカルでシンガーソングライター Wingさん

 英語ver.─Don Grusinさん(ボーカルはFemke WeidemaさんとAshley Maherさん) 

 イタリア語ver.─日本を代表するメゾソプラノ歌手 坂本朱さん

 ベトナム語ver.─ベトナムのポップ界を代表するスター ラムチューンさん

 ウクライナ語ver.─歌手・バンドゥーラ奏者。日本でも活躍 ナターシャ・グジーさん

 仏語ver.─「英語であそぼ」、車内英語アナウンスでお馴染み クリステル・チアリさん

 ネイティブ・アメリカンver.──ハバスパイ族のシャーマン ユークラアさん

 ギターインストver.──ギタリスト クロード・チアリさん



「歌うパワースポット!」中野くんの慰問ミニライブ


 震災のあと1か月は、慰問ライブには行っていません。「いったいどうやって行けばいいのだろう?」と思っていたら、石巻の知り合いが、「この状況を見に来てほしい」と言ってくれたんです。「小さいトコでいいから、演奏したいので、できるところありますか」と聞いて、とある神社の社務所のなかで演ったんです。

 

 まあ……だいたい想像していたけど、やっぱ凄かったですね。瓦礫とか、車とか、船とか……。それは生々しかった。


●ファンが“復興の中心”となる年代。「おれが行かなきゃ誰が行く!」

 

 阪神大震災のときは行けなかったんですよ。ショックが大きかったのと、自分は関西じゃないし、いろいろこう……騒がしいだろうし、迷惑をかけるのは申し訳ないな、とか、行くことに関してすごいネガティブなことしか思い浮かばなかったんです。

 

 だけど今回は、東京も激しく揺れたというのもあるんですけど、自分のファンの年代が、まさしく復興の中心となる年代じゃないですか。だから「これは行く価値あるかな」と思って。で、おれは今ほんとに自由に動けるし、ギター1本の演奏でも歌える歌手だし、認知度のある歌も持っている。「おれが行かなきゃ誰が行くんだ!」って思ったんです。


●鍛えられたのは、この日のためなのか?

 

 慰問ミニライブには「小回りのきく形で行こう」と思ってます。デビュー前とかに、ライブハウスで5人を前に演ったり、飲食店の片隅で演ってお客さんに「うるさい!」とか言われたりしてたので、(ストリートライブのような状況で歌うことも)ぜんぜん大丈夫。「このために鍛えられたんじゃないか、おれは?」みたいな感じですね(笑)。

 

 これまで「どこでもいい、呼んでくれたら行くから」というような感じでやってきました。もちろんこれからも、呼んでくれたら行きます。「歌うパワースポット」サンプラザ中野くんが行きますよー!

 


 ◎関連情報

・慰問ミニライブの模様はツイキャスで http://ja.twitcasting.tv/spnk

・慰問ミニライブ開催したところ

 4月──石巻市 塩竈市 郡山市 須賀川市 新地町

 5月──相馬市 大船渡市 福島市 須賀川市

 6月──登米市 南三陸町 相馬市

 7月──相馬市

 8月──相馬市

 9月──名取市 須賀川市