2010年

5月

22日

13年10万キロストーリー

サンプラザ中野くんの スバル インプレッサスポーツワゴンWRX

【お父さんの少年時代と、中野くんの少年時代】

 

 わが愛車、スバル インプレッサが走行距離10万キロを突破したのは、2010年の2月26日でした。買ったのは'97年の春です。『旅人よ ~ザ・ロンゲスト・ジャーニー』(猿岩石のユーラシア横断大陸ヒッチハイクを応援する歌)の印税で買いました。それから12年10ヶ月を経て、10万キロを達成したことになります。

 

──どうしてスバルのインプレッサを選んだのですか?


 当時ぼくが、「スバルがいいな!」「インプレッサがいいな!」と思うようになった理由は、いろいろあります。

 ひとつは父親です。うちの父親が病気になってまして……癌だったんですが、その前から体調が悪くて……そんな頃に、あらたまって聞くわけじゃないんですけど、なんとなく世間話をするような感じで、父親の生い立ちを聞いたりしてたんです。


 うちの父親は山梨県の農家の次男坊で、東京電力に就職するわけですが、戦時中は群馬県にあったスバルの前身、中島飛行機で働いていたらしいんです。その頃はうちの父もまだ少年だったから、「あれ持ってこい!」とかいわれて、お手伝いをしてただけだと思うんですけどね。

 

 中島飛行機というのは、優秀な戦闘機を作っていた、日本有数の飛行機メーカーです。父親から「そこにちょっとだけいて」という話を聞いて、「中島飛行機といえば、スバルのルーツだよね」と思ったんです。

──お父さんを通じて親近感のようなものを感じたんですね。

 

 もうひとつの理由は、子供の頃から、スバルのクルマに対して抱いていた印象です。
 中学生のとき、「技術・家庭」の先生がすごく合理的な人で、彼はスバルのクルマに乗っていました。
 当時スバルは、FF(前にエンジンを積んで、前のタイヤを動かす)の自動車を出していて、それに乗っていた先生が、自分のクルマのエンジンの利点について語ってたわけです。
「FR(前にエンジンを積んで、後ろのタイヤを動かす)のクルマは、前にあるエンジンの動力を、後ろのタイヤまで伝えるために、シャフトを通す必要がある。下にシャフトを通して、そこが盛り上がるから、室内は狭くなる」。

 彼は非常に合理的な人でしたから、「だからおれはスバルを選んだ」というわけです。「FFだから床はフラットで、車内は広々している。こんなに乗ってて気持ちのいいクルマはない。スバルは昔、飛行機を作っていた、日本の技術の粋を集めた会社なんだ。かつて飛行機を作っていたさまざまな技術を、クルマに注ぎ込んでいるんだ」と。

 あと、子供心に、スバル360、「てんとう虫」のかわいいデザインが印象的で、ぼくはスバルに対しては、「合理的」で「かわいい感じ」というイメージを持っていました。ただ、他の自動車メーカーと比べると、華やかさには欠けていましたけど。

 

 

【スノーボードと雪山のために「見栄」は捨てた】

 

 それからもうひとつ、大きな理由があります。
 わたくし30歳の頃からスノーボードをやり始めて、雪山に通うようになったんです。
 雪山を走るとなると、タイヤにチェーンをつけたり……慣れないわたしにとって、それは大変な作業でした。
 雪山には、小さめの外車で行ったりしてたんですけど、それはFR車で、非常にご迷惑をおかけしました。
 もうねぇ、何度も何度もスタック(雪にタイヤがはまって動けなくなる)して、何度も何度もわたくし原因の大渋滞を引き起こして……。「いまのクルマで雪山は無理」と判断したんです。

 それまで、どういう基準でクルマを購入していたかといえば、メインは「見栄」でしたね。「こういうクルマに乗ったらカッコいいんじゃないか?」という基準でした。
 しばらくして、『NAVI』(1984年創刊の自動車雑誌)を読むようになりました(実はインプレッサで10年10万キロを達成したら、『NAVI』の人気連載「10年10万キロストーリー」に応募しよう思っていました。2010年4月号で休刊になってしまったのが残念です)。『NAVI』という車雑誌は、「こういうクルマの選び方もあるぞ」と、ちょっと哲学的な選び方を提案していました。「エンスージアスト(熱狂的ファン・愛好家)」という言葉を使っていましたね。それに影響されて、そういう方向でクルマを選んだりするようになりました。まあ、それも、見栄みたいなものですね。


 つまり、ずっとぼくは、「必要に応じたもの」を買っていなかったんです。

──「必要に応じたもの」を買っていなかった?

 

 子供の頃からアメリカの影響を大きく受けていたために、「奥さんにするなら金髪のボインちゃんだ!」というような、思い込みがあったんだと思います。
 でも日本にいる限り、金髪のボインちゃんとは、友達になることすら大変です。それに、もし交際が始まったとしても、自分のアパートに連れてきて一緒に暮らせるのか? ──でも当時はそんなふうに考えなくて、「やっぱ、金髪のボインちゃんだ!」と。
 しかも、「今度はアメリカじゃなくて、ヨーロッパの金髪ボインちゃんがいいなー」みたいな理由で買い換えたり。そういうクルマ遍歴でした。

 ずっとそんな感じで、クルマを選んでいたわけです。でも、雪山で何度も途方に暮れて、ついにさとったわけです。「雪山に行ってスノーボードをする」となったら、その目的に最も適したクルマに乗るべきだ、と。


 そう思って、雪山を走るのにいちばんふさわしいクルマを探すことにしました。

 雪山にふさわしいクルマの条件は、まず四駆であること。そして小さいこと。軽いこと。
 日本の山道は非常にワインディングで、高低差も激しいし、道も細い。「でっかい四駆」という選択肢もありますが、「でっかい四駆」の場合、もしスタックした場合には、大勢の人の手を借りないと動かせないわけです。またご迷惑を、おかけしてしまいます……。

 だから小さいことが大事。小さくて、シャープに動くことが重要でした。
 リサーチを始めると、「それに合致するのはスバルではないか?」とわかってきて、それでスバルをじっくり研究したわけです。

 

 

【雪山に強いクルマ=四駆であること+小さいこと+軽いこと】

 

 まず、スバルが、日本でいちばん最初に乗用車ベースの四輪駆動車をつくったことがわかったんです。
 東北電力の人たちが、現場巡回のためにクルマで雪の中を移動するとき、それまではジープを使っていたそうなんですが、「スバルなら、ジープより快適で、巡回に適した車両ができるのではないか?」と、スバルに──群馬と東北が地理的に近かったこともあって──開発を依頼したそうなんです。そしたら見事に、スバルは乗用車ベースの四輪駆動車を作っちゃったわけです。

 

――日本の四駆のパイオニアということですね。

 

 さらに調べるとね、スバルの四駆というのは非常に合理的なんです。
 スバルの四駆は「ボクサーエンジン」(クランクシャフトを中心に、180度、左右対称にピストンを配置するレイアウトのエンジン)を採用しています。
 ボクサーエンジンを作っているメーカーは、いま世界に3社あります。スバルとポルシェとBMW。BMWはバイクなんですけどね。

 ボクサーエンジンは、ピストンが水平方向に動きます。
 ピストンが水平方向に運動するので、シリンダーも横に寝た形。だからピストンが上下や斜めに動くエンジンと比べて、エンジンの高さを抑えることができます。エンジンの全高が低いと、クルマの重心も低くなります。重心が低いとクルマの安定がよく、バランスを取りやすい。

 それに、左右で対向するピストンが、互いの振動を打ち消しあうので、無駄な揺れが発生しません。無駄な揺れがないので、揺れないようにするためのクッション材を最小限にできるし、クルマを小さくできます。

 しかも、左右に向かい合ったピストンの動きを、真ん中に通したドライブシャフトで、前後のタイヤへと伝える仕組みです。左右の重心がど真ん中にあって、そのままの状態でバランスがいい。一般的なエンジンと違って、左右のバランスをとるための複雑な仕組みが要りません。

 飛行機は、左右のバランスが非常に重要になりますが、飛行機メーカーの流れをくむスバルは、クルマにおいて、それを実現できているわけです。しかもそのことによって、あらゆる無駄をそぎ落とすことができている。「これは理想型に近いんじゃないか!」と思いました。

 

──飛行機メーカーのDNAが、スバルの四駆に流れているわけですね。

 

 調べていくほどに、スバル車の魅力に「やられちゃった」わけです。
 実際問題として、スバルのクルマは優秀でした。それは何で証明されていたかというと、WRC、ワールド・ラリー・コンペティションです。日本ではラリーよりもF1の方がメジャーですが、ヨーロッパにおけるWRCは、F1と同じくらい人気のあるモータースポーツなんです。ラリーのF1と呼ばれるこのレースに、スバルはインプレッサを投入していたわけです。そして強かった。

 

 

【おしりも顔も大好き。無骨なあいつと、14年目に突入!】

 

 おまけにぼくは、インプレッサの形も大好きなんです!
 SF人形劇『サンダーバード』でいうと、ぼくは2号が好きでした。サンダーバード2号の、まあるくて、ちょっとヌメッとした感じの角処理が、おれの乗ってるインプレッサのおしりの処理に、通じるものがあると思います(笑)。

 しかも! ぼくのインプレッサは、「WRX」といって、ラリー車の仕様に近いハイパワーモデルのスポーツワゴンなんですが、マニュアル車だけでなく、オートマ車もあったんですよ。都内の移動でストップ・アンド・ゴーを繰り返すのはオートマじゃないと辛い。もし、このとき、WRXにオートマがなかったら……買うかどうか、悩んでいたかもしれないですね。

 WRXだ、オートマだ、「これだっ!」と。『旅人よ』の印税も入ったし、「もう、買うしかない!」と思った。
 もう、なにもかもすべてが揃っていたわけですよ。
 っていうか、そっちの方へと、自分からどんどん詰め寄っていったわけです(笑)。
 そういえば早稲田大学を目指したときも、そんなふうに、外堀内堀を自分で埋めていった感じがしますね。「やっぱバンカラがいいよ」「やっぱりおれは早稲田が好きだ!」みたいな感じで(笑)。

 

──実際に乗るようになってからは、どうでしたか?

 

 乗ってもばっちりでした。車体が軽いし、出足も早くて気持ちいいんだよねー。雪山だって「どんと来い!」です。みなさんに迷惑をかけずにすむようになりました。
 しかもめちゃめちゃカッコいい。さっき「おしりのデザイン的な処理がいい」という話をしたけど、おしりだけじゃなく、顔も好きなんですよ。見るたびに「カッコいいなー!」って思うくらいですから、いまでも。

 今年も車検を通したから、14年目に突入しました! いいクルマに巡り会いました。
 それまではけっこう頻繁に乗り換えていましたからね。ひどい人でしたね。あ、いまでもひどい人かもしれない。洗わないし、掃除もしないから。
 でも、とにかく、これまでの人生で初めて10万キロを超えましたからね。夢のようですね(ニッコリ)。

──14年目! おめでとうございます。どうですか調子は?

 

 上々です。悪いところはほとんどないです。やっぱ日本車はすごいですね。ドアの窓もちゃんとスムーズに上下するし。ときどきサンルーフが動かなくなるときがあるけど、すぐ機嫌が直るしね。あとはなんにもないですね。シートもへたらないし。掃除も洗車もしないから汚いんだけど……でも、それもエコだと思ってたりするんです。洗剤もワックスも使わないようにすることで、環境に負荷をかけない(笑)。

 いまのところぼくは、クルマの買い換えに積極的ではありません。というのも、スバルがまだ、画期的なエコカーを出していないからです。できれば「ボクサーハイブリッド四駆」を出してほしいんですが、ボクサーエンジンでハイブリッドにするのは難しいと思うんですよ。

 スバルはヨーロッパで、ボクサーエンジンのディーゼル車を出しています。ヨーロッパで販売される自動車って、ディーゼル車が半分以上を占めていて、その理由は、ディーゼル車の方が燃費がよく、環境にもいいから、ということらしいです。
 ヨーロッパで販売されているボクサーエンジンのディーゼル車は、近々、日本でも発売される可能性があると思います。クルマの買い換えは、それが出てから考えてもいいかなーと。
 あと、スバルはいま、ボクサーエンジンの小型スポーツカーをトヨタと共同開発してるので、それが出たら一応試乗はしてみるつもりですけど、それでは雪山に行けないですから。

 ぼくの場合、山道を行くとか、細い道や雪道を走るとか、目的がはっきりしてるから、インプレッサ以上のクルマは、なかなか見あたらないですね。「何かものを選ぶときに、軸になるものがあると、すごく選択しやすくなるんだな」というのが、インプレッサ・ライフで学んだことです。「見栄とかは入り込まないでいいんだよ」っていうことがわかった。

「あのクルマもいいかなー」なんて、思うときもありますよ。でもね、インプレッサに乗ると、落ち着いちゃうんですよね。あいつはすごい。無骨な相棒みたいな感じですね。